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(140)「手考足思」

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2013年04月09日

さじかげん (140)「手考足思」

 陶芸家の河合寛次郎氏が残したとされる言葉「手考足思」を座右の銘にしている方は多いようだ。ジャーナリストの筑紫哲也氏もその一人だったと聞く「手考足思」と言う言葉を、「手をこね動かして考えて、足をはこんで自らが見て思う」と解釈すると、おおよそのものづくりの仕事に、当てはまることではないだろうか。

 

 香川のさぬき市に介護業界で知られる「あゆみ」という高齢者向けの靴を作る会社がある。同社は高齢者の転倒事故をなくすため、介護の現場に赴き徹底して高齢者の歩き方を観察し、改良に改良を重ねて「履くと楽しくなる」、「亡くなる前日まで歩いていたい」という高齢者の願いをかなえる靴を作り出している。利用者から毎日のように感謝の思いを綴ったはがきが何通も届くという。同社の社長は「私たちは靴屋ではない。高齢者に向けた会社なのだ」と語る。

 

 では、義歯作りはどうであろう。患者さんの年齢はさまざまだが、使う人の願いをかなえているだろうか。制度の問題は別として、本来、満足を得られる義歯を作るためには、患者さんの口腔内をよく観察し声を聞いて作製しなければならない。

 だからこそ「手考足思」である。いつでも口に入れた瞬間、患者さんがニンマリしてくれるような義歯を届けたい。そう考えると、このまま昨日までと変わらぬ義歯作りでいいのだろうかとつい思ってしまう。

  

 野生動物は歩くことや食べることができなくなると死を待つほかはない。「歩く」と「食べる」は命に関わる重要な要素だ。高齢者に大きく支持される靴メーカーのように、われわれも「入れると楽しくなる義歯」「ずっと食べられる義歯」を世に出し続けていきたいものだ。

 

 すでに「あゆみ」という靴は高齢者のみならず、病院で歩行のリハビリテーションを行う人々の願いもかなえ始めている。(W/W)

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