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(128)科学の罪

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2012年03月20日

さじかげん (128)科学の罪

発展が著しいものを世の中では中国、インド、そしてフェイスブックの順でいうらしい。

 フェイスブックは遠く離れた人とどこにいても瞬時に情報交換ができるシステムで、たとえ移動中でも、また、布団の中でまどろんでいても、気軽に意見のやり取りができる。

情報ソースは文字から動画まで可能であるから当然、仕事のスピードは加速した。

 

仕事だけではない。知人とのやり取りや趣味の交流においても同様だ。

 友達の友達はみな友達となるシステムだから、同胞が集えばより高い見識に出会える機会が多くなるし、反対意見もいただけるので勉強にもなる。

 まったく便利なものだと思って人にも勧めていたのだが、ある日を境に非常に不愉快な事態が起きた。

 他のWebを介して身に覚えのない架空請求や見知らぬ相手からの迷惑メッセージが大量に届く日が続く。便利なシステムを利用してずる賢くわなを仕組む悪人もいるのだ。いやはや、これでは大勢の人が迷惑するだろう。

 おそらく法的取り締まりも現実的には追いつかないのであろうから、こうなれば後ろ髪を引かれる思いで利用を止めることになるかもしれない。

 

 池田清彦氏の著書「正しく生きるとはどういうことか」の、資本主義の本質を説くくだりで科学の発展は恩恵と同時に弊害も生み出すことを指摘している。

 現にインターネットを利用する際に必要な登録は、自分の個人情報を提供するものが多い。そのリスクは自己責任とする世の中になっている。年賀はがきには住所氏名を書き、丁寧にも携帯電話の番号やメールアドレスまでしっかりと添えて送ったりしていることを思うと、なにやら皮肉にさえ感じる。

 

大正元年、小説「行人」が世に出た。著者は文豪、夏目漱石。

 漱石が主人公の兄に言わしめた言葉がある。「人間の不安は科学の発展からくる。進んで止まることを知らない科学は、かつてわれわれに止まることを許してくれたことがない」

 今からちょうど100年前に書かれたのだが、卓越した視点からの指摘だとは言えまいか。

 事実、科学の発展はその恩恵と同じだけの不具合を生じさせており、今や原発問題がその骨頂であろう。

 この春に国内すべての原発が止まる。

 人間の不安は科学の発展からもくるのである。

(W/W)

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