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(127)入れ歯と卵

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2012年02月21日

さじかげん (127)入れ歯と卵

 私の手元に昭和48年にF市歯科医師会から発行された歯科診療料金標準表がある。

 今から38年も前のものだが、金属床1顎Aは30万円、1顎Bは15万円とある。自然色冠はABCの三段階に分かれており、それぞれ6万円、4万円、2万円の表記がある。感覚的ではあるが、現在の治療費とあまり大きな差を感じない。

 「物価の優等生」といわれる鶏卵は20年近く価格が変わっていないと聞く。その理由を「雑学ウラ事情おもしろ辞典」という書籍の中に見つけた。JA全農たまごの回答によれば、それは「安定した需要」と「増産環境」にあると記されている。要するに、日本人は卵が大好きで、世界トップクラスの需要があることと、生産は機械化を進めて人件費を抑え、合理的に増産できる仕組みをつくったということらしい。

 インターネットで調べてみると、卵一個当たりの値段は25円くらいで、生産原価は13円だとわかった。ちなみに、最近購入した家庭園芸用のチューリップの球根が一個当たり30円であった。

 入れ歯の値段と卵の値段を単純に比べることに異論は多いと思うが、長い間価格が変わらないという点は同じだ。

 そう考えると歯科も「安定した需要」と「増産体制」を整えているということになるのか。歯科技工に限っていえば、若い世代の歯科技工士は減少しているし、義歯を製造するラボも減少している現実がある。

 そこで厚生労働省に素朴な疑問として「なぜ歯科の(入れ歯)の点数は上がらないのか」と質問をしてみると、「限られた財源の中で、相対的な評価をする場合、革新的な技術やエビデンスがあるものが優先される」との回答であった。

 ここにわれわれ歯科技工士としての課題も浮かんでくる。

私は常々、歯科の最終的な課題は「咬合」だと考えているが、われわれが造る補綴物には、患者さんが「噛めるようになった」というエビデンスがあるのだろうか。いかなる患者さんの症例にも科学的根拠が成り立たなくてはいけない。さらに言うならば、われわれが担う歯科技工は、国民の歯科受診率向上に貢献しているのだろうか。

 仮に補綴が保険から外れる日がくるとするならば、今以上にこれらの課題の解決が必要になることは明らかであろう。

(W/W)

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