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(118)日本人は鉛筆に戻ろう

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2011年05月10日

さじかげん (118)日本人は鉛筆に戻ろう

 先ほどから切り出しナイフを探している。しかし、見当たらなかったので、しかたなく台所にあった包丁を使い、古い鉛筆の芯を整えることにした。

 たちまち手元からプーンと漂う新しい木の香りに、どうしたことか選挙の投票用紙に記入する場面が思い浮かんだ。それも2Bか6Bの柔らかい鉛筆の書きやすさを手元に感じるほどの!

 刃物で鉛筆を削りだすという作業はすっかり生活の中から消えつつあるが、ズズッと木を削る感触は爽快である。しかし、ひとつ間違うと芯を折るし、指先を切ることさえある。それに不細工に削られた鉛筆には美しさがない。繊細な感覚が見て取れる鉛筆削りの技量は、まさに歯科技術そのものと言えよう。

 この鉛筆で思い切って原稿用紙1枚を書き上げたが、芯は1ミリも減った様子がない。

 日本人は鉛筆に戻ろう。世の中は、これで良かったというものが便利さを追求して、どんどんと形を変え、あらゆるものが十分を過ぎてしまった。ボールペンはインクがまだ半分残っていても机の引き出しで眠ったままになっている。

 今やこの国は、ものの処分に困り、それに必要となる費用や場所に苦慮し、ついには国際競争力が失速するといった事態に陥っている。

 戦後、何もかもがなくなってしまった時代に命あることのみを頼りとして、鉛筆を握りながら学び仕事をした。そして世界をリードした日本はいつしかぜいたくという海に沈没しつつあるのだ。

 現代のわれわれに必要なことは、暮らしの中で少しの不便を我慢することなのかもしれない。もちろん必要以上の我慢は発展の邪魔をする。

 しかし、いずれにしても必要以上であることは国の衰退を伴い、すなわちそれは国民の力の衰退を示していると言えよう。

 

 補綴の大家である先生は、今でも補綴物の設計に鉛筆を使う。芯の腹を使いサベイングを行い、とがった芯の先でクラスプの設計ラインを引き、義歯床縁のラインを流れるような手つきで記入していく。

 石膏の表面にしっかりと線を引くには鉛筆が最適だとおっしゃる。

 

 さて、日本各界を代表して最初に歯科人から鉛筆に戻ってはどうであろうか?

 

代表取締役会長 和田 弘毅

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