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(117)ありそうでなかった弁当

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2011年04月05日

さじかげん (117)ありそうでなかった弁当

 昨年、千葉県歯科医師会が「いい歯の日」(11月8日)にちなんで監修した「八○二○御弁当」が3日間限定で販売されたという報道があった。製造を担当したのは千葉市内の老舗駅弁業者・万葉軒である。

 歯科関係者には「エッ」と驚いた方も多いと思う。「8020運動」はあまりにも有名であるため、このようなお弁当作りに逆に気付かなかったのが本音ではないか?

 さて、この弁当。食べ終わるまでに約1200回かむ計算になるというからユニークだ。気になる中身は、千葉県らしく名産の落花生を入れたおこわをメーンに、豚肉、イカ、タコ、野菜は、さつま芋、竹の子、ゴボウなどを使った多彩なおかずが盛り込まれている。

 あえて歯ごたえのある県内産の食材をふんだんに使う工夫がされているそうだ。1200回という回数は、健康な人でも20分かけて咀嚼をする計算になるらしい。現代人の食事の平均時間は11分という報告があるが、食事時間20分というのは江戸時代初期までさかのぼることになる。

 動物のドキュメンタリー番組で大きなクジラが、巧妙な技で一気に餌を食べるシーンを見た時は、動物の捕食の知恵に「すごい!」と感心したものだ。しかし同時に、「おいしいの?」という素朴な疑問を持った。

 われわれ人間には視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚がある。肉汁の滴るステーキがジュ~と脂を飛ばしながら鉄板で焼かれ、何とも言えない良いにおい。やわらかい歯ざわり。そして最後に、ああ、おいしいとなる訳だが、大量の海水と一緒に餌を丸呑みするクジラは、ただただ生命の維持を目的として捕食をするだけで、食事を楽しむ、味覚を楽しむことができないのだろうか? それはクジラに聞かなければ分からない。

 しっかり噛んで食材本来の味を感じて、楽しい会話をしながら、うまい酒をいただく。日常の生活において食事が楽しめないことは、言い換えれば人生を味気ないものにすることだろう。

 この「八○二○御弁当」を一時的なもので終わらせることなく、各都道府県歯科医師会による監修での開発、販売を期待したい。命を守るのが医科ならば、暮らしを守り、生活の質を上げるのは歯科だ。

 千葉県歯科医師会に問い合わせたところ、20個以上の注文が出れば県歯から業者に発注していただけるそうだ。「ホッ」と安心した。

代表取締役会長 和田 弘毅

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