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(105)「恩返し」

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2010年03月09日

さじかげん (105)「恩返し」

 TBSの報道番組「報道特集NEXT」が、中国製歯科技工問題を取り上げて放映したのは、先月の6日、13日のことであった。 

 もともと海外委託は、指示書の伝達すらまともに出来ない国際間の業務で、しかも最も大切な歯科医師の処方箋なしに、仕事が進捗するはずがない。かつてシンガポールから、あるいは韓国、台湾から仕事をもらっても、言葉の違いが障害となって、仕事の拡大を阻止していた。その上、日本の歯科医師が指示書を書くどころか口頭で指示が来る現状ではさしたる問題はないだろうと、のんびり構えていた。

 ところが、放送が始まる1週間前になると、名古屋のA氏や東京のM氏が「2月13日午後6時15分には、ぜひテレビを見るように」と盛んに言ってくる。TBS放送が何チャンネルかも分かっていないまま、その時間が押し迫ってきた。

 当日は四国にいたため、友人の娘さんに「一体何チャンネル?」と尋ねる始末。11チャンネルと分かったのは、6時15分ちょうどであった。

 テレビのスイッチを入れるといきなり、「中国・上海の大学教授・張建中先生は…」と張教授がでてきたので驚いた。「えー張さんが」と食い入るように見つめていると、張教授は「日本と中国との歯科の技術格差は30年もあり、その遅れを取り戻す努力が必要」なことを表明した。

 次に出てきたのは、上海和勝精密歯科制作有限公司代表の王煉氏であった。「日本には歯科材料に対する厳しい規則があるが、中国にはない」と有害・無害の基準がない中国の実態を表明した。

 この両氏はいずれも、今から16年前に大阪に留学していた。張建中教授は大阪大学で「チタンの研究」で学位を取って帰国し、上海第二医科大学で助教授に就任した。日本での生活を支えてくれたと、お母さんが手作りのかぼちゃやスイカの種を一升瓶に入れ、それを帰国するたびにお土産として持参し、その恩恵に預かった覚えがある。

 一方、王煉氏は当社に1年間在職研修し、金属床の製作過程を勉強し、当時は四畳半一間の冷暖房なしで暮らしていたことは記憶に新しい。訪中するたびに両親が日本での生活を喜んで、わざわざお礼の挨拶に来られたことも、つい昨日のことのようである。

 張建中氏、王煉氏、両氏の日本びいき、日本の歯科医療に対する尊敬の念は、翌日電話で聞くこととなった。電話を通じて、テレビの感想を述べると、2人とも、「いや僕は今も昔も変わりませんよ。当たり前のことを言っただけです!」と、日本の歯科界に対する恩返しをしてくださったのである。

 もちろん歯科において、日本と中国との間で30年もの技術格差はない。中国の歯科技術は、今やもうそこまで近づいてきている。

代表取締役会長 和田 弘毅

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