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(103)75歳、心静止

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2010年01月12日

さじかげん (103)75歳、心静止

 元気なうちに心臓の弁を取り換えておいたほうがよい。それも二大病院で同じことを言われ、間違いなく手術に応じるべきである!  との診断を下された。ゴルフも人並みにしているし、日常の散歩も6千歩(約4キロ)は毎日欠かさず行っていた時に突如、こうして入院日が決定し、「大動脈弁置換術」の手術に踏み切った。
 

 手術は75年間使ってきた大動脈弁を生体弁(牛の弁)に取り換えるもので、成功率は97%。香川大学医学部の担当教授は、その確実性からごく一般的な心臓手術であることを説明して下さった。しかし、手術前日になると「明日はもう心臓が止まったまま戻ってこられないかもしれない!」と不安が募り、夜、眠れるか自信がもてなかったが、折も折、病院の窓から夕陽に輝く病棟を眺めていると、突如七色の虹が、それも二重の虹が鮮明に輝いていた。急いでカメラを取り出し、何枚も撮影した。窓は病院側が明るく、回りは暗い奇跡的な風景を収めることができた。
 

 その夜はいつも飲んでいる軽い睡眠薬を倍ほど飲んでいつの間にか眠ってしまった。
 

 朝8時半から手術室に入り、昼過ぎには手術が完了すると言われ麻酔のパイプを加えた。5分も経っただろうか、今眠ったところだと思っていたのに「終わりましたよ」と言われ、人々の心配顔を横目に集中管理室に運ばれて行った。
 

 「これからの丸一日が苦しいぞ」と過去の手術経験から覚悟を決めて、じーっと天井を見つめていると、水色に輝く血液型標示板がキラキラと輝きながら、ゴム紐につられてエレベーターのように上下しているのが見えた。それを見ていたら、なんとも言えない軽快な気分になった。この楕円形の小判型にO(オー)と記された模様が大いなる希望を与えてくれたのであった。
 

 咽喉が渇いて「氷、ください」と言えば、二切れほどの氷が口に投入してもらえる。この味がまた絶妙で「この氷、一体何で作っているのですか」と思わず聞いてしまうほどであった。
 

 こうして山場の二日間を、虹と血液型標示板の水色の輝きと、口に入る氷によって乗り切ったのであった。
 

 孫の一人から「じいちゃん死んだら駄目だよ!僕が大学を卒業するまでは生きといてくれ!」と念を押されたのもしみじみと心に沁みた一言であった。
 

代表取締役会長 和田 弘毅

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