HOME > プレスリリース > (99)長いトンネル
プレスリリース2009年 一覧に戻る

(99)長いトンネル

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2009年08月11日

さじかげん (99)長いトンネル

 朝のウォーキングを始めてちょうど一年になる。毎日平均六千歩、必ず30分以上は歩いてきた。ウォーキングのコースを変えると、また違った気分が味わえる。大学のキャンパスや牛、山羊、蟹、蛙、雉子らと挨拶を交わすコースも面白い。
 中でも何となく魅力を感じるのはトンネルのあるコース。暗いトンネルを歩くと、ずっと向こうに光がさして素晴らしい風景になる。人生の縮図のようであり、暗い環境でもじっと我慢して前進していると前方が開けてきて、パーッと明るくなり、まさに関門をくぐり抜ける一瞬がある。
 時折、歯科補綴物、特に保険のクラウン、インレーに思いを馳せる。全部鋳造冠の価格は、近隣諸国の安い国と比べても我国の価格は2万円ほど低く、大きな差がある。今もってその低価格に甘んじてボランティアを続けている我々歯科人だが、10年間で国民のために1兆円を超える金額を奉仕していることになり、その計算がなされていないことが不思議である。
 銀行や証券各社などの金融機関の方々と話をすると必ず「歯科は景気の波に左右されなくていいですね」と言われる。最近では金融機関に限らず肉屋や床屋からも同じせりふを言われるようになった。しかしお金の専門家は、「それにしても利益率が非常に低いのはなぜですか」と必ず言ってくる。
 熟練者の手作りであること以外に、健康保険の不採算はもう半世紀に及ぶ。前述の全部鋳造冠の話を付け加えると、「それは国民の誰も知りません。なぜ知らせないのでしょう」と適正利益の会話となる。
 弁護士や公認会計士、医師、歯科医師の日給は昔も今もあまり変わらない約8万円だから、時給約1万円である。3時間の治療なら時給と時間の積だから、人件費だけで約3万円になると説明する。
 金融機関の専門家など、異業種の人たちと話をすると、長いトンネルから抜け出すことのできる光明が見えてくるのであった。

代表取締役会長 和田弘毅

pagetop