HOME > プレスリリース > (96)「しつけ糸」
プレスリリース2009年 一覧に戻る

(96)「しつけ糸」

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2009年05月12日
さじかげん (96)「しつけ糸」

 先日、書類の整理をしている時に、あるメモに目が留まった。「丁寧語で指示を欲しがる世代」と、急いで記している。確かコミュニケーションに関する研修会の時の走り書きだ。5月に入り、4月に入社した新入社員は皆元気かとよく考える。

 五月病という言葉を聞いて久しいが、最近では六月病という言葉もあるらしい。学生が五月病で、企業では六月病という説もあるようだが、いずれも心の病。現れる症状が「うつ」となると看過できない。いまや社員のメンタルケアは企業にとって最重要課題の一つだからだ。

 職場での悩みは当の本人にとっては最大の問題であることは間違いない。歯科技工士の育成を考えると「今どきの若いモンは」と簡単には片付けられない現実がある。

 メンタルケアは大切だが、技術の伝承も同じく大切だ。紛れもなく歯科技工は技術の世界。指導方法は時代と共に変化するだろうが、基本的に「技術は盗んで覚える」という基本的な形が変わったわけではない。

 歯科技工で学ぶことは山ほどある。臨床の現場に出て、本当に必要だと自覚した時から学び始めても遅くはない。若い諸君はゆっくりと学べばよいのだ。

 離職傾向の強い技工業界にとって若い力はまさに宝だ。将来を担う才能を育む責任の半分は先輩たちにもある。

 この季節に得意先を訪ねるとニューフェイスの方に出会う。歯科医院でも学ぶことが多くて大変だろうが、患者さんのためにもどうかがんばってほしい。

 先頃政府は2009年のGDP成長率をマイナス3.3%と修正した。新しく社会に飛び立った新人の方を含むすべての方々と手を携えて、この不況を乗り切りたいと切に思う。

 この春、近くの大学のバス停でひとりの青年を見かけた。はらはらと散りはじめた桜の下で革靴の紐を締め直していた。さっぱりと刈り込んだ頭髪が印象的で初々しい紺のスーツ姿にヤル気がみなぎっていた。陽光の中の後ろ姿がとても絵になっていた。

 「あれっ」

 スーツのセンターベンツに白い「×印」のしつけ糸が残っていた。満開の桜の下で靴紐を締めていた君の決意を我々はしっかりと受け止める。しつけ糸のことは先輩諸氏がそっと教えてくれるだろう。(W/W)

代表取締役会長 和田弘毅

pagetop