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(78)噛み合わせ

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2007年09月18日

さじかげん (78)噛み合わせ

 
 カニを食する機会が年に何度かある。以前ふと「このカニは右利きか左利きか」と単純な疑問を持った。
 
 遊び心で左右のハサミを動かしてみたが、内側に並んだ突起はあたかも歯のように自然と噛み合うように思えて興味深かった。ついでに調べてみると種類によっては、はさみを使ってはさむ、切るだけでなく、すりつぶすといったものもいるようで驚いた。
 
 ところで件のカニは〝右利き〟と判断したのであるが、その理由はハサミを手に持ち動かしてみると突起が隙間なくスムーズに噛み合ったからである。彼らに利き手があるかは分からないが、自然界の生物である以上、合理的に使える側を使うであろう。きっと人間も食事をする時に、上下の歯の咬頭がスムーズに噛み合えば「噛める!」ということになるのだろう。それには歯牙の排列位置や咬頭の位置が及ぼす影響は大きいと思える。
 
 咬合論は昔から多く論じられてきたが、患者の立場からすれば「食事の時に噛めるか、噛めないか」ではないか。この「噛める」ための先生方の苦労をよくよく知っている。
 
 咬合の調整をどうしているかを見るために技工作業の現場に行ってみるが、その多くは限界運動によってなされている。しかし、下顎を何度も突き出して食事をしてはおらず、いわゆるすりつぶす咀嚼の運動をしているのだ。
 
 食育基本法の第3条には「食に関わる人々の様々な活動」という一文があるが、広い意味で我々歯科技工士も含まれるであろう。しかし補綴物の製造側である我々が、咀嚼をしている時の顎の動きや歯の機能をよく理解しているのか疑問がある。
 
 咬合とは上下の歯が噛みあっている状態のことを言い表しているが、大事なことは食事をする時の顎の動きと、スムーズに動く時に影響を及ぼす歯の位置や形態の方なのではないか。
 
 この正しい咀嚼運動を顎連動記録装置に記録したものこそ、「よく噛める」の根拠だと考えるのは間違いか。
 
 さて今年は〝左利き〟のカニと出会ってみたいものだが、それが彼らにとっては甚だ迷惑な話であろうことだけは間違いない。(W/W)

代表取締役会長 和田弘毅

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