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(67)能勢の名物 蝮(まむし)と雷

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2006年10月10日

さじかげん (67)能勢の名物 蝮(まむし)と雷

 
 大阪のチベットと言われる標高600メートルくらいの高原の下に、豊能郡能勢町山辺という地区がある。飛行機の上から見ると、日本海と太平洋とのちょうど中間に位置し、朝夕には鹿と猪を見ないことの方が少ないほど山奥の山奥で、ハンターの宝庫と言われるだけあって、兎も狸も山鳥も蝮も出る。
 
 地元の方々に、「蝮は何とかなりませんかねえ」と相談してみたが、「昔は毎年一人くらい咬まれて死んでいたぐらいだから、能勢の名物、蝮と雷というのじゃないですか!」と、退治方法は誰も教えてくれない。
 
 初秋のある日、私はこの地を訪れていた。今年も蝮が、縁側の敷石の下にとぐろを巻いていたのである。日中、日当たりの良い所で日向ぼっこをするらしく、発見して、1メートルくらい近づいても身動きもしない。しばらくにらめっこをした後、家の裏に回って、長い火箸でも取って来るべくその場を去り、元の位置に帰るともう影も形もない。
 
 昔、シベリアに抑留された兵隊さんが、岩の下にいる蝮を獲って照焼きにし、栄養源を確保するという話を聞いたことがある。
 
 蝮が、縁側の敷石の下にいることは間違いないが、出入口が不明である。私は、空気銃で打つか、ネズミを捕る鳥もちを使うかしか退治方法を知らない。今は空気銃は許されないので、鳥もちを仕入れてきて一晩、敷石の回りに貼りつけて、朝を待った。敷石は、枕元から2メートルくらいに位置する。
 
 一命を失いかけない猛毒を持った蝮が近くにいるのかと思うと、どうにも安心して寝られない。2日がかりのチャレンジの効果があって、2時間ほど町に出かけて帰ってくると、大きい蝮がべったりとくっついていたのである。たった2週間くらいで、こんなに太くなったかと思われるほど大きくなっていた。
 
 長い長い3メートルもあろうかと思われる高枝バサミで、ネズミ用の鳥もちにかかった蝮を挟んで丘の上まで持ってゆき、恐らくそのうち現れるであろうトンビの餌食にと期待して、じっと観察していた蝮の頭は小さく二等辺三角形に尖っている。背中には、丸形の模様が連なったしま模様である。
 
 一連の写真を撮影し、一段落したのであるが、貴重な三連休を潰して蝮獲りに専念し、あれこれ頭を悩ませることなど、人様から見れば全く馬鹿げたことだと笑われるかも知れない。
 
 しかし自分も他人も命がかかっているからこそ、これほど真剣に時間を投じるゆえを得心した貴重な体験となった。

代表取締役会長 和田弘毅

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