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(66)人の話を聞かない男 地図が読めない女

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2006年09月12日

さじかげん (66)人の話を聞かない男 地図が読めない女

 
 国際理解と親善を深めるために、旧知の韓国友人のドクターからK君という37歳の青年を1年間、日本語修得と歯科技工の留学生として受け入れた。
 
 K君は、留学期間中は大変良い子で、日本人との交流も勉強も何の問題もなく1年が過ぎた。帰国直前に周囲の人々で送別会をするというので、「成果はどうですか」と尋ねると、突然「帰国したら現在の歯科医院を辞める」と言い出したのである。
 
 「勉強させてもらい、日本語をマスターできたのに、勤務先の院長や親子にそれでは義理が果たせないから、せめて1年間だけでも御礼奉公というか、勤務すべきである」と関係者はこぞってたしなめた。
 
 「絶対に辞めてはいけない。辞めれば日本との交流の窓口が閉ざされ、今後はこの会社にも出入りしにくくなる」とまで言ったにもかかわらず、韓国に帰国後、すぐに電話で、「T歯科は辞めました」と言う。
 
 国際電話でT院長に確かめると、「いやー、顔を出しなさいと言うのに出さずに、そのあたりのラボを回って職探しをしている」と言うのである。
 
 韓国の釜山までは1時間もあれば行けるので、2、3年の空いた空白を埋めるためにも、出向いて確認することにした。
 
 聞くところによると、将来のパートナーである若先生とうまが合わないとのことである。
 
親院長はこの事情を聞いて、給料の改善と勉強の効果を期待して、明日から仕事に復帰するよう要請した。
 
 いったん、手を振り上げたK君は、いろいろ条件を改善しても振り上げた手を下ろせない。そこで設備の改善を要求し、「日本で使っているようなミリングマシンを入れて欲しい」とか「将来レーザー溶接器を買って欲しい」とか駄々をこねた。
 
 3日間の滞韓中に、結論として復帰に至ったが、若院長との関係は態度を変えたとは思えない暗黙の和解であった。
 
 当のK君は空港まで私を家族で見送ってくれ、「会長、僕は今後仕事の上ではどうすればよいのでしょうか?」と質問してくれた。私は、「技術は37歳にもなると、これ以上はあまり向上はしないだろうから、院長を始め、人の話を聞いて、相手の思っていることを実現することですね」と答えた。
 
 世の中には人の話をまるで聞かないでいて、自分は一方的にしゃべりまくる人がいるが、それに比べると、この留学生は結局、聞く耳を持っていて短期間で円満に解決した。人の話を聞かない男達は世界中どこへ行っても多いが、このケースは時間をかけて聞いてもらえたため、ハッピーエンドになったのかもしれない。しかし面白いことに今回の通訳と、采配をしてくれたのは、地図の読めないはずの日本人女性Mさんでありました。

代表取締役会長 和田弘毅

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