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(58)中近東(そと)から見た日本

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2006年01月17日

さじかげん (58)中近東(そと)から見た日本

 
 年頭にあたり、「一人一文字」を所感として掲げるように依頼を受け、私は「光」を掲げました。今回は、「光」を職業とする紀行写真家の石関順子先生に、「中近東(そと)から見た日本」と題し、特別に投稿いただきました。「光」は正しい日本の姿を写していると思います。
和田弘毅
 
 古い話ですが、昭和天皇の大喪の礼には、世界各国163カ国の弔問がありました。その大半が東南アジア、アフリカ、大洋州といった途上国ばかりで、中には日本からの要人渡航暦が全くない国さえあり、写真学生だった当時、過分な厚情を感じたものです。それがどうやら「ジャパンマネー」のご威光だと知った時には、何とも興ざめな話となりました。
 
 私は今、カメラを旅の道連れに、イスラム圏の国々を中心に撮影をして歩いています。そんな旅の途中で、モロッコのガイドが突如、口にしたのがこの大喪の礼の話でした。「私たちの王様は大喪の礼に行ったのに、王様が死んだ時、日本からは誰も来なかった」と言うのです。
10年以上も経って一体何の話かと虚を衝かれましたが、帰国後調べてみれば、今は亡き高円宮様と同妃殿下がちゃんと参列しており、文句を言われる筋合いもなければ、もはや訂正の術もありませんでした。おまけに、日本から対モロッコ無償資金協力として、年に300億円を超える巨費が投じられていますが、そんなことも全くモロッコの国民は知りませんでした。
 
 衛星放送の普及率が大変高い中近東の国々では、テレビをつければ欧米諸国の衛星放送が見られます。しかし、それら欧米経由でも、また英字新聞でさえも“JAPAN”という言葉は皆無で、天気予報に至っては、世界地図に日本の形すらない有り様…、実に極東の島国の悲哀を覚えます。
 
 世界に出れば日本なんてこんなもの…と思った“日本”が、近年立て続けにニュースに登場したのは、中国での抗日運動とJR福知山線の脱線事故でした。さらなる驚愕は、地下鉄サリン事件の検証番組をチュニジアで見たことです。
中近東の国々で、偶然目にした“日本”は、「アジアの不仲」と「大惨事」のみで、これが日本だと思われたら随分バイアスが掛かるな…と不本意に思ったものです。
 
 そうかと思うと、イランの町ではよく「オジン」と声を掛けられます。誰かが変な日本語を教えたのだと嘆かわしくも一瞥すると、「ヤポーニャ、オジン!」と喜んでいます。ガイド曰く、数年前にドラマ「おしん」が放送されたとかで、日本人女性を見れば誰彼構わず「オジン!」の掛け声ラッシュだったのです。
 
 さて、こんなにも僅かでひどく偏った情報の日本は、さぞかしヘンテコな国に映ることでしょう。それでも不思議と親日家が多い中近東の町を歩きながら、はたと思いました。私たちもまた、中近東の情報と言えば、「テロ」や「過激派」といった狂信的信仰のもたらすキナ臭さばかりなのです。アラブ人の旅人への優しさや壮大なスケールの遺跡群など、かけがえのない美しさに満ちた中近東世界を知らない人は多いようです。
 
 そんな世界をファインダー越しに眺めながら、双方に正しい国の姿を等身大の情報で伝えることが今、写真を撮る者の使命なのかと再認識している次第です。(紀行写真家 石関順子)

代表取締役会長 和田弘毅

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