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(42)神の入れ歯

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2004年08月31日

さじかげん (42)神の入れ歯

 
 45年間も入れ歯作りをしていると、いろいろな方から、こんな歯を作らないか、あんな歯を作らないか、とご提案をいただく。「獣医さんと協力して猫や犬などペットの入れ歯を作れば、人間の入れ歯を作るよりはるかにお金が儲かるからぜひやれ」と言われたこともあるが、話を聞いて20年経った今もそれは実行していない。
 
先日、当社の関連会社を定年退職したI氏が挨拶のために来社し、「毎日が日曜日のようなものだから、ぜひ石垣島に遊びに行きたい」と言っていた。I氏の友人である獣医さんが石垣島に移住し、「今までしたかったことを自由にやりたい」と言って、奥様と一緒に魚釣りなどをしながら島暮らしをしているそうである。
 
石垣島には、私が親しくしている歯科医院が何軒かあり、数名の先生方の別荘もある。また、息子の関係で交流がある歯科医院や技工所があることもお話しした。中でもよくお世話になっている技工士の金城氏は、石垣生まれの石垣育ちで、歯科技工士より観光業の方が似合っているのではないかと思うほどの名ガイドである。タイで何年か過ごした経験もあり、東南アジアきっての観光ガイドであるとお話しすると、「ぜひ金城さんを紹介してほしい」と言われた。
 
すぐに彼の携帯に電話し、I氏の友人のことを尋ねてみると、「それは警備保障会社会長の別荘の隣ではないか」と、簡単に話がわかり、彼流の答えが帰ってきた。その友人氏は、本業である獣医を辞めてこの島に来たのに、思いがけず、狂牛病問題や、ペットの避妊手術などでお忙しいとのことである。
 
「人生、何が幸いするかわからないね」と話していると、金城氏は「ところで、神の入れ歯を作りませんか」ときた。「神の入れ歯? 人間の入れ歯で精一杯なのに、神様の入れ歯なんて作れないよ」と答えると、「いやいや『紙』の入れ歯。香港から沖縄まで間違いなく売れます」と金城氏は言う。
 
東南アジアでは、ベンツやクルーザーなど、故人が愛用した物を紙で作ってお棺に入れる習慣があるとのことである。入れ歯も紙で作って一緒に燃やすらしい。生きている人の入れ歯さえなかなか満足してもらえないのに、ついに亡くなった人のために紙の入れ歯を作る羽目になるか、という話の種になるエピソードである。
 
 はるか石垣の彼方から届いた儲かる話に、一瞬、食指が動き、制作費用を調べてみた。しかし、金型代に800万円かかるとは、紙の入れ歯ならぬ「神の入れ歯」ではないか、と思った次第である。

代表取締役会長 和田弘毅

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