HOME > プレスリリース > (41)社会の誘惑に負けない
プレスリリース2009年 一覧に戻る

(41)社会の誘惑に負けない

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2004年07月30日

さじかげん (41)社会の誘惑に負けない

 
 3年ぶりに伊豆高原の伊東市富戸にある、ヒポクラティック・サナトリウムに行き、1週間、断食修行をした。3kgほど体重を減らし、メディカルスキャニングで危険値であると診断された内臓脂肪の値を、標準値の域に近づけることが目的である。1週間の入所はそうきついものではなく、近くに新しくできたアフリカン・アートギャラリー、ガラス工芸館等、12~3箇所はあると思われるミュージアム巡りや、プール、ゴルフに行くには最適の立地条件にあるため、不自由しないバカンスのような時間の過ごし方ができる。このサナトリウムに来ている方は、真面目に毎日朝晩、約1時間散歩をしたり、欠かさずサウナや温泉へ入ったりして精進している。
 
 サナトリウム滞在中に聞いた2時間にわたる講義の中で、院長の石原結實先生は、なぜ人間は死ぬのか、死ぬ原因となる病気の種類の順位はどうであるかといったことを説いてくださったが、結論として、病気にならないためには、身体を温めること、そのためには身体を冷やさないものを食べることを強調されていた。そして、今や、日本人の食生活においては、何を身体に入れるかより、いかに身体から出すかということの方が、健康を守る上で大事であると話された。
 
 そのようにして、1週間、世俗と断絶して静かに石原式の健康生活を送った。スーパーマーケットやコンビニへ行かないどころか、冷蔵庫とも縁がない。高原なので、夏だろうがクーラーも必要ない。しかし、元の社会生活に戻り家庭に帰ると、必ず冷蔵庫のお世話になり、クーラーのスイッチを押す。そしてコンビニで便利な物、好きな物を入手する。かつて、氷もクーラーもなかった時代と比べると、日本人の体温は徐々に下がっており、人間社会全体での平均体温も下がっていると聞く。快適さ、便利さを提供する産業構造は、人間の身体をひ弱にし続けているのである。
 
 隔離されたサナトリウムでこの現象を日々実感し、元の社会、家庭に帰っても、氷で冷やしたものや、クーラーの誘惑に負けないようにしようと思った。しかし、10日もしないうちに、また社会の誘惑に流され始めるのである。外食産業は、冷たい物だけではなく必要以上のご馳走を提供し、今や、5㎞以内の食材どころか、5万㎞以上、地球上のどこで作られたものも手に入り、食卓に並ぶ。かつての高級料亭のように、旬の味覚を調理するすばらしい日本料理は廃れていこうとしている。自然から発生した料理と、流通から発生した料理との綱引き競争を感じずにはいられない。
 
 不便な時代、不足していた時代を懐かしく思い、四季を忘れず、現代社会の誘惑に負けない、理性のある日常生活と健康を常に心がけたいものである。

代表取締役会長 和田弘毅

pagetop