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(33)患者さんかクライアントか

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2003年11月11日

さじかげん (33)患者さんかクライアントか

 
 最近、なぜか各種学会に参加する機会が増えた。たとえば夏季セミナーなどは、季節柄、自然に涼しいところを選んで学会が開催されるので行きやすく、夏休み期間中の、宿泊付きの学会参加は楽しいものである。さて、これらの学会において、最近特に臨床との結びつきを強める傾向が顕著になっている印象を受ける。 歯科の臨床現場では、日常的に「患者さん」という言葉が飛び交う。数多く繰り返される言葉のひとつである。もうかなり前から、お医者様方は「患者さん」という言葉を何気なく使われているが、呼ばれる立場からすれば「○○患者さん」というのと、ただ「○○ さん」と名前で呼ばれるのとでは、だいぶ違って受け取られるだろうなぁ、とこのごろ考える。
 
 それは、たとえば「入院」と「検査入院」との微妙な違いのようである。「入院」といえば少し深刻な響きがあるが、「検査入院」といえば聞こえが良い。「何も病気をしていないが、ただ検査のために入院している」という安心感も伴うからであろう。 ある学会で若い衛生士さんが、歯の漂白、英語でいうホワイトニングに関する発表で演壇に立った。単なる歯科医師の助手としての仕事ではなく、院内で独立して患者に施術できることの喜びから、大変意欲的である。自分で仕事を決定判断できる分野が拡大したという意識からであろうと察する。このとき、彼女は「患者」と言わなかったのである。「『クライアント』としての歯の漂白を考えるとき」という言葉に変化したのを、七十六歳になる長老歯科医師が高く評価された。全く同感である。
 
 歯科医院に来る人は全て患者、つまり「病気にかかったりけがをしたりして医師の治療を受けるための人」ではない。アメリカのUCLAで教授をされている西山一郎先生は、「漢字を直訳すれば、心に串を刺すと書き、心で悩み苦しむことという意味である。必ずしも患者イコール病気ではない」というようなことをおっしゃっていた。
 
 学会では「患者」という表現をせざるを得ないのであろうが、実際にはもしかしたら、「クライアント(顧客)の方々」という呼び方が、DOS(Doctor/Disease Oriented System)からPOS(Patient/Problem Oriented System)という患者中心の医療の時代感覚にふさわしいのかもしれない。

代表取締役会長 和田弘毅

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