HOME > プレスリリース > (30)歯科人は総論に弱くないか?
プレスリリース2009年 一覧に戻る

(30)歯科人は総論に弱くないか?

メディア 日本歯科新聞 掲載日 2003年07月10日

さじかげん (30)歯科人は総論に弱くないか?

 
 「総論賛成、各論反対」ということばがあるが、総論はよく分からないから賛成で、各論は個々の現場だからよく分かっているので、反対したくなってくるのではないかと思ったりもする。
 
 近頃、医療経済学が発達し、医師や歯科医師以外の方々の間で、医療費の適正論が飛び交うようになってきた。それは国民の医療費が適切であるか、不適切であるかを問うものである。
 医療の施術、標準時間が表に出てきて、そのドクターの人件費等を積算することで、大体の医療費が算出されるようになり、平均値が出やすくなった。
 
 一方、医療施術時間にばらつきが出るという問題がある。例えば、技工において一歯毎に歯冠形成するのに、20分かかる場合と40分かかる場合があるといったことである。健康保険ではそれを一律に捉えていて、特にクラウンブリッジの作業模型を作って適合の品質を上げる方法等は、クラウンの製作料の中に含まれるとの解釈があり、全体の20%も占める作業時間は、全く評価されない。このあたりが、戦後の健康保険の補綴物は卵と一緒で、全然価値が変わっていないと言われる所以である。
 
 これを医療経済学者が目をつけないはずはない。その結果、何個の治療を何人の人で、一日何時間、何分でと、総論の医療費予算が、現行に比べて適正であるかどうかを比較して論じられるようになった。
 
 日本全体の歯科医療従事者数、すなわち歯科医師数、歯科衛生士数、歯科技工士数は分かるし、使用材料の生産動態も分かれば、患者数や平均治療時間も分かるはずであるが、この種の講演会には、技術を論じる総義歯の講演会ほど人が集まらない。聞いても、明日の現場に役立たないからである。
 
 私はかねがね、フルキャスト・クラウンなら一日に何本フィニッシュ可能かについて考えていたが、技工士の製作可能本数から割り出すと、前述の全くお金にならない作業模型の製作を含めて、5本ではないかと経験的に判断している。したがってその前後を処置する歯科医師側も、それに比例して5本の線が一日のフィニッシュ数ではなかろうかと、大まかではあるが推察することができる。
 
 この一つをもってして総論が可能になるとは言わないが、少なくとも適正な治療費が現在の保険の数倍で現れてくるはずである。つまり各論が分かれば、総論が分かるということを言いたいのである。

代表取締役会長 和田弘毅

pagetop